Surgery

涙道内視鏡手術

涙道内視鏡とは

涙の通り道を“直接見る”ことができる小さなカメラです。
涙は、目頭から鼻へと流れていきます。その細い通り道を「涙道」といいます
涙道内視鏡は、その涙道の中に入れて、実際の内部の様子を直接観察できる、とても細いカメラです。

これまで涙道の治療は、「涙やめやに」「塩水を入れて通るかどうか」だけで判断することが中心でした。
しかし涙道内視鏡では、

  • どこが詰まっているのか
  • どのくらい狭くなっているのか
  • 炎症や感染があるのか

を目で見て確認することができます。

“見えないまま治療する”のではなく、“見ながら治療する”。
それが、涙道内視鏡の大きな特徴です。
原因を見極めながら、その場で治療まで行えることが、大きなメリットです。

当院で使用している涙道内視鏡について

当院では、日本で開発された高精細涙道内視鏡を使用しています。この機器は、涙道内を明るく鮮明に映し出すことができ、現在、海外にも広まり始めています。
岩崎医師はこの涙道内視鏡の開発にも携わり、改良や臨床応用の検討に関わってきたため、

  • 機器の特性を熟知している
  • 画像のわずかな変化も読み取れる
  • トラブル時の対応も経験豊富

という強みがあります。
単に機械を使うのではなく、その構造と限界を理解した上で使うことが、安全で精密な治療につながります。

主な涙道疾患

涙と目やにの原因は「涙道」にあることがあります。
涙は目を潤す大切な存在ですが、涙腺で作られた涙や、眼球表面をとおり、目頭にある涙点から涙道に流れていくことでバランスが保たれています。
涙の通り道(涙道)が狭くなったり詰まったりすると、下記の症状が現れます。

  • 涙があふれる
  • 目やにが続く
  • 充血を繰り返す
  • 目頭が腫れる

涙道閉塞

涙道はもともと細い通り道のため、アレルギーや風邪などによる炎症、頻回のプール利用、抗がん剤治療、加齢変化などをきっかけに、狭くなったり詰まったりすることがあります。

白内障手術を受ける年代では、約5%前後に涙道閉塞がみられるとの報告もあります。
涙道が閉塞すると、涙が鼻へ流れにくくなり、 涙があふれる(流涙)症状が起こります。

涙道感染症

涙道閉塞が起こると、閉塞部より上流に涙や分泌物がたまりやすくなり、細菌が増殖して感染を起こすことがあります。
目頭を押すと、目やにや透明〜黄色の粘液が目に出てくる場合は、「慢性涙嚢炎(まんせいるいのうえん)」と呼ばれる状態です。
感染が急激に悪化すると、目頭が赤く腫れて強い痛みを伴う「急性涙嚢炎」になることがあります。

また、涙小管(涙の入り口の細い管)に膿や石状の塊がたまると、結膜炎を繰り返す「涙小管炎」という疾患を生じることがあります。

涙道内異物

涙道内に異物が存在すると、炎症や感染の原因になることがあります。
代表的なものとして、下記があげられます。

  • 石(点眼薬の成分や細菌が固まったもの)
  • 涙点プラグ(ドライアイ治療で使用したものが奥へ迷入した場合)

これらは内視鏡で直接確認することで診断できる場合があります。

涙道内腔再建術(ELDR)とは

涙道内腔再建術(ELDR:Endoluminal Lacrimal Duct Recanalization)は、涙の通り道(涙道)の“元の道”を、内側から再び開く治療です。

当院では、細いカメラである「涙道内視鏡(dacryoendoscope)」を用いて、実際に涙道の中を直接確認しながら治療を行います。
詰まっている場所を目で見て確認し、閉じてしまった部分を広げて、本来の涙の通り道を回復させます。

チューブの挿入について

涙道内腔再建術(ELDR)で広げた涙道は、そのままではまた狭くなってしまうので、涙道内に涙管チューブというステントを挿入します。太さは1~1.5mm位です。目頭に少しチューブは見えますが、日常生活には問題ありません。挿入期間は2~6か月くらいで、涙道の状態によります。当院では国内で使用できるチューブを多数そろえており、涙道の状態に適したチューブを挿入します。

涙道内視鏡を使った涙道内腔再建術(ELDR)のメリット

皮膚や鼻を切開したり、骨を削ったりすることなく、涙道の内側から治療を行う点です。そのため体への負担が比較的少なく、多くの方が翌日から普段通りの生活に戻ることができます。術後何日も安静にしたり、大きな出血を心配しながら過ごしたりする不安がありません。

また、ELDRは新しい通り道を作るのではなく、もともと備わっている「本来の涙道」を生かして再建する治療です。できるだけ自然な状態に近づけることを目指す、やさしいアプローチの手術といえます。

治癒率について

治療後に涙の症状が改善する割合はおおよそ80〜90%程度です。

ただし、体質や閉塞の状態によっては、長い経過の中で再び狭くなることがあり、成功率は時間とともにやや低下することもあります。

涙嚢鼻腔吻合術との違い

涙道の治療には、大きく分けて当院が行っている涙道内腔再建術(ELDR)と涙嚢鼻腔吻合術(DCR)の2つの方法があります。

涙道内腔再建術(ELDR)涙嚢鼻腔吻合術(DCR)
治療の考え方 元の涙道を内側から再建する 新しい通り道を作る
侵襲(体への負担)
  • 皮膚切開・骨削開なし
  • 負担が比較的少ない
  • 日頃の内服薬はそのままでできる
  • 骨を削って新しい道を作る
  • 侵襲はやや大きい
  • 抗凝固薬の中止が必要なこともある
術後の生活 多くは翌日から通常生活可能
大きな出血の心配が少ない
術後の生活制限や注意が必要
治癒率 約80~90% 90%以上と高率
長い閉塞の適応 閉塞距離が長い場合は成績が下がる 長い閉塞でも安定した成績
通院 術後の通院回数や期間がやや長い 術後の通院が少ない

涙道内腔再建術(ELDR)だからこその完全予約制

ELDRは体への負担が少ない一方で、術後にチューブの状態確認などの定期フォローが必要です。

通常の外来では、待ち時間が長くなることが負担になる場合もあります。そのため当院では完全予約制を採用し、術後の通院ができるだけスムーズに行える体制を整えています。

待ち時間を最小限にし、落ち着いた環境で丁寧に経過を確認します。
術後管理まで含めて、安心してお任せいただける体制を大切にしています。

手術日の注意とよくあること

手術日の見えづらさ

術後は約5時間程度、眼帯を装用していただきます。その間は見えにくくなるため、転倒などにご注意いただく必要があります。
手術当日は自動車の運転や自転車に乗ることはできません。

※両眼同時手術の場合は、片目のみ眼帯を使用します。眼帯をしていないほうの目も通常よりはかなり見づらくなります。その場合は付き添いの方についてきてもらったり、タクシーなどでのご帰宅をお願いします。

眼の違和感

手術日から約1週間はチューブを入れた目頭に少し違和感を感じることがあります。自然に改善します。

涙や唾液に血が混じる

涙や唾液、鼻水に数日間は血がにじむことがありますが、自然に改善します。

リスクと合併症

涙道内視鏡手術(ELDR)は、皮膚を切らずに行う比較的身体への負担の少ない治療です。しかし、すべての医療行為と同様に、一定のリスクや合併症の可能性があります。

治療効果について

回の治療で長期的な改善が得られる割合は約80%とされています。
体質や閉塞の状態によっては、再び狭くなる(再閉塞)ことがあります。

チューブ挿入について

涙道の状態によっては、チューブを挿入できない場合があります。その際は、他の治療方法についてご相談いたします。また、予定と違う形状のチューブを挿入することがあります。

主な合併症

出血・腫れ

麻酔注射の際に、まれに内出血が起こり、まぶたが腫れたり、数週間あざが残ることがあります。通常は自然に改善します。

感染症

ごくまれに、術後に感染を起こすことがあります。その場合は抗菌薬などで適切に治療を行います。

アレルギー・薬剤反応

麻酔薬、点眼薬、内服薬により、まれにアレルギー反応や副作用が起こることがあります。

ドライアイ症状

手術後、一時的に目の乾燥感を感じることがあります。

症状が残る可能性

涙が多くなる原因が涙道以外(結膜弛緩、角膜の傷など)にある場合、手術後も一部症状が残ることがあります。

全身状態について

重い全身疾患をお持ちの方は、身体的リスクが高まる場合があります。
安全に配慮し、必要に応じて主治医と連携いたします。

よくある質問

Q

初診の日に治療まで可能ですか?

A

可能です。当日治療をご希望の場合は、予約時にお知らせください。

Q

涙道内視鏡検査はどんな検査ですか?

A

涙道の中にとても細い内視鏡を入れて、涙の通り道の状態を直接観察する検査です。どこが詰まっているのか、どのような状態なのかを正確に調べることができます。

Q

涙道内視鏡手術は痛いですか?

A

通常は局所麻酔で行うため、麻酔の痛みはあります。処置中に違和感を感じることはありますが、多くの方が問題なく受けられています。

Q

入院は必要ですか?

A

日帰り手術です。術後はそのままご帰宅いただけます。

Q

手術時間はどのくらいですか?

A

通常片眼10〜30分程度です。閉塞の程度により長くなることもあります。

Q

手術後はどれくらいで普通の生活に戻れますか?

A

多くの場合、翌日から日常生活は可能です。激しい運動などは医師の指示に従ってください。

Q

チューブはいつまで入っていますか?

A

通常2〜4か月程度です。状態により長くなる場合もあります。

Q

再発することはありますか?

A

閉塞の原因や部位によっては再閉塞することがあります。その場合は再治療や別の手術方法をご提案します。

その他に関する内容は「よくある質問」ページをご覧ください。